あるエピソード
まだお目にかかったことのない L さんへ
もうずいぶんと前の話ですが、聞いてください。
ある音楽教室の発表会でのエピソードです。
その時の発表会は、大きなホールでした。
プログラムは、子どもたちのあとに大人の演奏。
子どもといっても、小学生高学年~中学生くらいになると、大人顔負けの難易度が高い曲を弾きます。最終グループは高校生たち。それなりのテクニックがあり、これは難しそう!の曲が次々に演奏されました。
最後の高校生が弾き終わり、お辞儀をし、拍手をもらい、舞台袖に戻りました。
さて、いよいよ大人の演奏が始まります。
この、上手な子たちのすぐあとに弾く初心者の気持ちときたら!もう(´;ω;`)ウゥゥ
実は、わたくしも経験がありますのでよーくわかります。(>_<)
が、小さな頃からピアノをされていた指導者の方は想像しにくいから、こういったプログラムで開催れたのかもしれませんね。
さて、最初に登場したのは、小さなレッスン生のお父さんでした。
子どもと同じように、経験や曲の難易度から演奏順番を決めていたようです。
背広姿のお父さん。少し緊張気味のようでしたが、お辞儀をして椅子の高さを直して
あ、なかなか落ち着いてるな!の印象です。
演奏曲はきっと誰でもが聞いたことがあるでしょう、クラシックの超有名曲。
その曲のテンポは、Allegretto(やや速く)です。きっと皆、早歩きくらいの曲が始まるのだろうな、と思っていたはず・・・・・・・・・
弾き出すと、速度はLargo ?? 遅いです。おっそいのです。
コレって行進曲?ほんの少しの違和感。
ところが、だんだんに違和感は消え、ほぉ~となったのです。
弾き終えると万雷の拍手!!!
聴いている大人たちは、先生方も含め、良かったですねー!!
音楽には、演奏る人の人となりが出るのだと思います。
お父さんは、初めて数か月のピアノを一生懸命努力されて練習なさったのだろう。
そんな背景も見えるような、、
そして、真面目な人柄が醸しだされているような朴訥とした演奏に、聴いている人たちの胸が打たれたのではないかと、何年たってもたまに思い出れる情景なのです。
それは、もしや、プロのピアニストのだれやかれやよりも脳裏に残っているのですから、ほんとうに不思議なものです。
正直、大曲で指のスピードがあって、シロウト見にも、ものすごくテクニックがあるだろうけれど、(こちらの体調や気分のせいかもしれませんが)なぜか心に響かないという演奏会もありました。
技術だけが、人の心を動かすとはいえないような気がします。
たとえ、とっても簡単な曲であっても、弾いている人の、音楽好きや内包される音楽性、音楽を大切に想う気持ちなどから生まれるものから、舞台と客席の空間が優しさや愛おしさや和みや潤いやらが満るのでしょうか。
どこにでもいるようなフツーのお父さんが、ド・シロートの私だけでなく、ピアノの先生方をも興奮されたのです。なんかすごくないですか!?
その何年か後、そちらの発表会は、子どもと大人が別の日になったと聞いています。
Lさん ではまた。